性味:甘、平 帰経:脾胃、大腸
生薬解説:麻子仁:麻の実:潤下薬
1.豊富な植物性タンパク質
畑の肉といわれる大豆と同じぐらい(35%程度)のタンパク質を含有する。大豆にはタンパク質の吸収を阻害するトリプシン・インヒビターが含まれていて、タンパク質の消化吸収が妨げられるという欠点があるが、麻のタンパク質はエデスティン・タンパクと呼ばれ、血漿成分に近いアルブミン型で、消化吸収にすぐれている。また、大豆にはアレルギー物質が含まれているが、麻には含まれていない。
麻のタンパク質には、すべての必須アミノ酸がバランスよく含まれている。
2.必須脂肪酸が理想的バランスで
麻の油には、必須脂肪酸が80%以上含まれているが、この含有率はすべての自然の油のなかでもっとも多く、特にリノール酸(n-6系)とα・リノレン酸(n-3系)のバランスが厚生労働省が推奨する4対1に近い割合で含まれている。麻の油のα・リノレン酸は、頭にいいと言われている魚の油と同成分のEPA、DHAに変化する。
3.鉄、銅、亜鉛などのミネラルが豊富
厚生労働省の最近の調査によれば、現代日本人はカロリーは足りているが、鉄、銅、亜鉛の3種のミネラルが不足しているということである。麻は玄米、大豆、そばやほかの食品と比較して、これらのミネラルを豊富に含んでいる。その他、食物繊維も豊富。
1.成人病予防・・・麻の油に含まれるα・リノレン酸は血液をやわらかくサラサラに。
それにより、動脈硬化や心臓病、脳梗塞を防ぐ。細胞の原料となる必須脂肪酸が多く含まれるので、病気に対する免疫力が高くなる。
2.肥満防止・ダイエットに・・・肥満は糖尿、心臓病など多くの病気の原因になっている。ダイエットするには動物性タンパク質と脂肪の摂取量を減らさねばならないが、タンパク質と必須脂肪酸は人体に欠かせない。これを麻の植物性タンパク質とバランスのいい必須脂肪酸で補うことができる。またビタミン、ミネラルも多く含まれていて、バランスよくダイエットできる。麻の実の必須アミノ酸は筋肉をつくり、アミノ酸(タンパク)ダイエットに利用できるほか、炭水化物が少ないので低インシュリン・ダイエットにも利用できる。麻の食事は比較的少量で満腹感を得られる。
3.老人食として・・・麻は長寿食:滋養補虚・・・方剤:麻仁蓯蓉湯、潤腸丸
高齢者はお粥などのあっさりしたものを好む傾向がある。このため、炭水化物が多くなり、タンパク質が不足する。玄米に麻を加えることにより、炭水化物、タンパク質、必須脂肪酸、ミネラル、ビタミンがバランスよく摂れる。麻はノン・コレステロールである。
4.アレルギー・・・卵、牛乳、大豆、青身魚にはアレルギー物質が含まれるが・・・
麻の実には含まれない。これらのタンパク質の代替として、麻の実を利用することができる。子供のアトピーには麻に多く含まれるα・リノレン酸が効果的という説もある。子供の成長に必要な必須アミノ酸であるヒスチジンが多く含まれているため、子供の食生活改善にも有効。
5.便秘解消と美しいお肌に:潤腸通便・・・方剤:麻子仁丸
女性の大半は便秘に悩むと言われるが、麻は漢方では緩下剤として用いられてきた。麻に含まれるγリノレン酸には美肌効果もある。老人、産婦、体虚の血虚津枯の便秘に最適である。
《材 料》
A 豆腐(木綿) 1丁(水切り)
葛粉 大さじ5
麻の実 1/2カップ
山芋 100g(すりおるす)
塩 小さじ1/2
B 長ネギ 10cm(みじん切り)
生姜 1/2片(〃)
人参 50g(〃)
牛蒡 30g(〃)
流し箱(クッキングシートを敷く)
葛あん・・・だし汁1カップ、酒小1/2、薄口醤油小さじ1、塩少々
水溶き葛・・・くず粉大さじ1、水大さじ2
薬味・・・柚子皮(又は柚子こしょう)、絹さや
《作り方》
① Aを合わせておきます。(ボールにすりおろした芋を入れ、豆腐をつぶしながら加えてよくすり混ぜた所に麻の実を加える)
② ①にBを加えて混ぜ合わせて流し箱に平らに入れ、蒸し器で30分程度蒸します。
③ 葛あんの材料を煮立てて水溶き葛でトロミをつけます。
④ ②を切り分け、薬味を添えてすすめます。
★麻の実は、人体に必要な必須アミノ酸をすべて含み、脂肪酸の配分は、リノール酸4、アルファリノレン酸1と言う理想的なもの、更に、多量の脂肪を含む優れた食材です。
加熱による酸化が進み易いので、高温の調理には向きません。
生をご飯、サラダ、揚げ物などにそのまま振りかけていただくのが簡単でおいしいいただき方です。食卓に常備して調味料の一つとしてご利用になるのが一番です。
日本では古くから麻が生活に密着していました。古くから神事に使われ、又、蒸し暑い夏の衣類には欠かせない素材です。七味唐辛子の中にポツンと麻の実の硬い実が入っていたことはどなたでも記憶の中にあることでしょう。
古来中国では「麻子仁・ましにん」として生薬の一つとして使われてきました。
漢方薬の「麻子仁丸」は古くから老人性の便秘薬として使われてきました。
現在でも諸外国では、医療の分野で難病の治療に使われ効果が認められています。
《材 料》
麻の実・・・・・2カップ
水・・・・・800cc(4カップ)
《作り方》
①麻の実と2カップの水をミキサーに入れ粒がなくなるまで回します。
②2カップの水を加え、中火で60度まで加熱します。(加熱しなくても良い)
③漉し器にかけてミルク(水分)とおから(固形物)に分けます。
(麻の実ミルクはこれで出来上がり)
(固形物は更に、布袋に入れて絞るとおからができます。)
④おからをフライパンで空炒りし、水分を飛ばし、香ばしいおからを作ります。(焦げやすいので火加減に注意しましょう。)
(麻の実おからの出来上がりです。)
☆注意 麻の実ミルクを65~70度以上に加熱すると、水と脂肪分に分離してしまうので気をつけましょう。
出来上がったミルクとおからは、いろいろなお料理に使用できます。
麻の実ミルクは、毎日少しづつ飲むと体質改善によいようです。
麻の実のおからは、春雨や椎茸などと合わせて春巻にするのがおすすめ。
そのほか、数種類の野菜と合わせた炒め物にもおすすめです。
2021年9月加藤ゐくこFamily62 コピー及び転載を禁止いたします。